アロマに関わる人々にスポットをあて、お話を聞くインタビューシリーズ『AROMA PEOPLE(アロマピープル)』がスタートします!
記念すべき第1回目のゲストはアロマセラピストの成田麻衣子さん。
「いい匂いは人を幸せにする!」をモットーに、アロマテラピースクール&専門店の運営をはじめ、和精油の製造販売、アロマ空間演出、イベント出展、本の執筆など多方面で活躍されています。
成田麻衣子 / Maiko Narita
1979年兵庫県生まれ。アロマセラピスト。合同会社MoonLeaf代表。「いい匂いは人を幸せにする」を座右の銘に、100種類の香りの中から3種類の香りを選び、その場で調香する「カオリヲツクリマス」を百貨店などさまざまな場所で発信。資格取得講座から講師育成まで、活動は多岐にわたる。著書に『幸せを引き寄せる「香り」の習慣』(幻冬舎)がある。
グレープフルーツの香りで痩せるという不思議。それがアロマとの出会い
――まずは、アロマとの出会いのきっかけを教えてください。
大学卒業後、国内化粧品メーカーで販売と教育を担当していた時にアロマテラピーに出会いました。当時、グレープフルーツの香りを嗅いで痩せるっていうボディジェルが発売になったんですね。それで、「匂いで痩せるってそんな簡単なことあるの?」と不思議に思い、アロマに興味を持つようになりました。そこから社内研修の一環で、アロマテラピー検定の勉強をしたり、アロマインストラクターの資格を取ったりしました。
――アロマに関わる仕事をスタートすることになった経緯とは?
深くは考えていなかったのですが、大きな転機となったのは結婚ですね。仕事が好きだったので、ずっと化粧品メーカーで働く予定だったんですが、やっぱり結婚を機に生活環境が変わってきたり、パートナーがいることで時間の調整も難しくなってきて、このままずっと働き続けられるのかなぁ…って。でも、私はおばあちゃんになるまで働いていたいという想いがあったので、ならば自分のペースでできる仕事を探そうと思って行き着いたのがアロマテラピーだったんです。何だったら自分でできるだろう?と考えた時に、「アロマテラピーならできるかもしれない!」って。
化粧品も好きだったんですが、販売になると商品がありき。お客さんの悩みを聞きつつも、今月はこれを売りなさいという会社の方針に従わなければいけないこともある。それで、だんだんと「お客さんの肌に本当にあってるのかな?」と疑問を抱くようになり…。
お客さんから色々な肌悩みを聞いている中、ある日、ふと「それならその人の悩みにあう化粧水を作ったらいいんじゃないかな?」って頭に浮かんだんです。化粧水を作れるっていうのはアロマテラピーの醍醐味だったりもするじゃないですか。なので、そういう手作りでその人に合うものを提供したいという想いも強かったんです。そんな想いで、2011年8月にMoonLeaf(ムーンリーフ)を立ち上げました。
――アロマを軸にさまざまな活動を展開されていますね。
アロマテラピーに関するいろいろな活動をやっているのですが、大きくわけると3つあります。1つ目は日本アロマ環境協会の総合資格認定校として、アロマセラピストやアロマインストラクターを育成する活動。2つ目は、香りをその場で調香してオリジナルのアロマミストを作るワークショップ『カオリヲツクリマス』という活動。そして3つ目は、日本の香りである和精油ブランド『NIKKA』の製造販売を行っています。
アロマテラピーの効能をきちんと伝えるだけでなく、もっとその枠を超えて、「香りってこんな楽しいことできるよね」とか「いい気分になるよね」っていう人を増やしていきたいという想いがあって、最近ではイベントやワークショップの現場に立つ時間を増やし、特に香りの楽しさやその魅力を伝えていく活動に力を入れています。2016年からは、独自にブレンドした30種類の香りを展示する『香り、LIFE展』という新しい試みにもチャレンジしています。
1万人以上が体験。自分だけのオンリーワンの香りが作れるワークショップ「カオリヲツクリマス」
――『カオリヲツクリマス』を始めたきっかけは何だったんでしょうか?
『カオリヲツクリマス』は、「とにかく自分のいい匂い、心地よい匂いを選んでほしい」「ちょっとした幸せを感じてほしい」に特化してスタートしたワークショップなんです。
MoonLeaf立ち上げ当初はアロマテラピーの資格取得講座だけを開いていたんですが、資格にフォーカスすると、どうしても資格だけとればいいみたいな雰囲気になってしまうことも。もちろん試験に合格したらいいっていうのも一理あるんですけど、それだけではちょっとさびしいなぁというところがあって。純粋にアロマテラピーを楽しんでもらいたいという想いを形にしたのが『カオリヲツクリマス』というワークショップなんです。
――選べる香りのバリエーションの多さに驚きました。
全部で130種類ほどありますが、最初は10種類くらいだったんですよ。でも、人の感性や感覚は本当に広がっているので、10種類ではどうしても感覚が狭くなってしまう。これでは自由な表現が難しいというのを感じ始め、どんどん増やしていくうちに、今ではこんな種類になりました。
――ストロベリーやバナナ、チョコレートなど思わず食べたくなりそうなフレーバーもたくさんありますね。
そうなんです。これらは天然の香料で、口に入れても良い安全性の高いものを採用しています。
MoonLeafのママスタッフさんに歯科衛生士の方がいるんですが、その方がクレイで歯磨き粉を作ったり、子どもたちに歯磨き粉を作って歯磨きの仕方を教えるワークショップをやっているんです。本当はペパーミントやラベンダーを使ってほしいけど、そうすると子どもたちは嫌がって歯磨きまでたどり着かない。そこで、安全な香料を取り入れて、歯磨きを楽しくしようというのがきっかけでした。
特に子どもは大人よりも嗅覚が敏感なので、ダメなものはダメになって、香りを作るという体験そのものを楽しめなくなってしまうんです。できるだけそういった垣根を下げるためにも、いろんな香りを取りそろえています。
暮らしを豊かにする“日本の木々”の香りたち
――日本の香りの和精油ブランド『NIKKA』についてもお伺いさせてください。
MoonLeafでは「いい匂いは人を幸せにする」をモットーに活動しているんですが、ある時、そんないい匂いばかり必要なのかな?と思う自分も出てきて…。普段、家で過ごしている時にどんな香りなら落ち着くんだろう?って考えていた時に、ひのきの香りなど落ち着くものにたどり着いたんです。
ちょうど2012年の夏の終わりから、お客さんの目の前でひのきや杉を蒸留する『蒸留LIVE』を行うことになり、そこからのご縁が広がって『NIKKA』という和精油ブランドが生まれました。
木々の香りって華やかな香りではないけれども、きっと暮らしを豊かにすると思っているんです。「暮らしを豊かに」というのもNIKKAのコンセプトのひとつなんですが、NIKKAではそんな日常の暮らしの中で使ってほしいアイテムを取りそろえているのが特徴です。
――『NIKKA』ではどんな香りが人気ですか?
ダントツ人気はひのきです。アロマセラピストさんには屋久杉、アロマ経験者の方には青森ヒバも人気があります。アロマ初心者の方には、ひのきやゆずが人気ですね。
――和精油は日本人にとって親しみやすい香りが多く、今後『NIKKA』はますます注目されそうですね。
そうですね。ただ、和精油を広めていくためにはまだまだ難しい部分はあります。例えば、アロマテラピー検定で出題される精油に、まだ和精油はひとつも入っていないんですよね。
でも、ありがたいことに、和精油を製造している関係者の方からNIKKAに入れてほしいというお声をいただいたり。NIKKAでは今後も、日本各地の自然の香りを、日本の文化や伝統と一緒に伝えていくことを大切にしていきたいです。
成田麻衣子さんの気になるアロマライフは?
――成田さんの普段の香りの楽しみ方について教えてください。まず、お気に入りの香りはありますか?
やっぱり、ひのきは定番ですね。ひのき単体も好きなんですが、ひのきと他をブレンドした時の深みのある感じが好きです。何とブレンドしても奥深さを出してくれて。日本生まれ香りって文化的なものもあるのか主張しないんですよね。ブレンドした時に喧嘩してっていうのがなくて、そっと奥に隠れてくれたり。単品もいいんですけど割と地味なので、ブレンドしたときに威力を発揮するなぁと。特にひのきとラベンダーのブレンドがお気に入りです。
――アロマはどのように活用していますか?
2つあって、まず芳香浴は絶対ですね。今、子育て中で家が荒れてしまうこともあるのですが、いい匂いがあるとその場が綺麗になる気がするんです(笑)
もうひとつは化粧水。精油の効能を知ってしまうと、実はちょっと芳香浴がもったいないと感じる時があるんです。「これは絶対肌に入れないと!」って。レシピはシンプルに水とBGとコスメ原料が基本。精油はフランキンセンスが定番ですね。保湿力を高めたい時は、ヒアルロン酸やコラーゲンを足します。普段のスキンケアはこの化粧水だけで足りるんです。目周りやほうれい線など乾燥する部分には手作りみつろうバームを塗ったりもしますが。手作り化粧水は、簡単に作れて、肌の状態や肌悩みに合わせて自由に入れる材料や量を決められるのがすごくいいですよね。
香りはゆったりとした時間を過ごすきっかけに
――アロマを始めて変わったことはありますか?
肌は綺麗になりました。自分で化粧水やバームを作るのがいいんでしょうね。自分の肌と向き合うきっかけにもなりますし。
あとは、以前は好きな香りだったけど、今はそうでもないなってことがありますよね。それはきっと心の中にも何かしら変化が起こっている証拠。そういう意味では、香りは過去の振り返りや自分と向き合うきっかけにもなっています。
――成田さんにとって、アロマはどういう存在ですか?
そうですね…アロマは“気持ち”のような存在ですね。気持ちや気分というか。香りも目に見えないですけど、気持ちや気分も同じく目に見えないもの。でも、確実に何かありますよね。嬉しい気持ちや悲しい気持ちがあるように。この2つはすごく密接に結びついている気がするんです。
例えばダイエット。これで痩せるっていうものがあったとしても、それをやりたいっていう気持ちがなければやらないですよね。その気分を整えてあげるというか。やろう!っていう気持ちだけじゃなくて、落ち着かせるとかいろいろな気持ちを整えるのにアロマが一番いいんじゃないかと思っています。アロマで気持ちを整えられたら、もっと過ごしやすくなるし、暮らしも豊かになる。同じことをしていても、より豊かな気持ちで物事に向き合えたりするんじゃないかなって。しんどい方も減るんじゃないかなって思ってるんです。
そして、匂いを嗅ぐことはゆとりや余裕の部分だとも思うんですよね。そもそも気持ちや時間に余裕がなければ、匂いって嗅げないというか…。感じないと思うんですよね。だからこそ、香りはゆったり過ごせるきっかけにもなっています。年齢を重ねていくと、そんなにせかせかしたくもないじゃないですか(笑)余裕のない感じもしんどくなってくるので、アロマテラピーって年齢とともに必要なんだなぁってすごく感じます。
――最後に、成田さんのこれからの活動や、今後の目標、夢などについて教えてください。
MoonLeafは、大阪のほか、札幌、山口、兵庫、横浜にも拠点があり、近々もう1拠点増える予定なんです。なので、それらを円滑に回していくことが今年の目標ですね。アロマテラピーの生業をやっていける人を増やしていきたいです。NIKKAはまだまだ知らない方も多いので、ワークショップやイベントなどを通じてまずはNIKKAを知ってもらう活動に力を入れていきたいと思います。
――成田麻衣子さん、ありがとうございました!
MoonLeaf
http://moon-leaf.com/
NIKKA
http://nikka-aroma.com/
interview by 小田ゆき