手作りクリームやキャンドル作りで親しまれる「ミツロウ(蜜蝋)」は、ミツバチが巣を作る際に分泌する天然のロウ成分です。未精製と精製という性質と用途が異なる2つのタイプがあります。この記事では、ミツロウの基本的な特徴をはじめ、未精製と精製ミツロウの違いや用途、質の良いミツロウを選ぶためのポイントについて詳しく解説していきます。
小田 ゆき
アロマとメディカルハーブのスペシャリスト
アロマ専門メディア『AROMA LIFESTYLE』主宰。YouTubeでもアロマ情報を発信し、チャンネル登録者は2万人を超える。セミナー講師、コラム監修、メディア出演などで幅広く活動中。自身の経験を踏まえた、わかりやすく丁寧なレッスンに定評がある。プライベートでは1児の母。詳細プロフィールはこちら
ミツロウの基本情報
ミツロウ(蜜蝋)とは?
ミツロウとは、ミツバチが巣を作るときに分泌する天然のロウ(動物性ワックス)のことで「ビーズワックス(Bees Wax)」とも呼ばれます。ミツバチは自分の体から分泌するロウで六角形の部屋を形作り、そこに蜜や花粉を貯蔵し、次世代を育てるための場としています。つまり、ミツロウとは“ミツバチの巣そのもの”と言えます。
ミツバチの巣を作るのは働きバチたちの仕事。食べた蜜を材料に、お腹にある特殊な腺(蝋腺と呼ばれる)でロウを作り出し、巣を作るのだそうです🐝
どんな効果があるの?
主な作用として、ミツロウには抗菌性と保湿性があります。これらの特性は、化粧品やスキンケア製品で重宝されています。また、ミツロウのゆっくりと燃える性質は、キャンドルづくりにも理想的です。
ミツロウの主な作用
- 保湿作用:
ミツロウのエステルと脂肪酸は、肌にバリアを形成し、水分を封じ込めることで保湿効果を提供します。 - 抗菌作用:
ミツロウは自然な抗菌特性を持ち、製品の保存性を高めることができます。 - 保護作用:
肌に薄い保護膜を作り出し、外部の刺激から肌を保護します。 - 安定性:
ミツロウは酸化しにくいため、製品に安定性をもたらし、長期間保存が可能になります。
参考:ミツロウはどんな成分が含まれるの?
ミツロウは主に脂肪酸エステル、水酸化脂肪酸、炭化水素、およびアルコール類から構成されています。この複雑な化学構成がミツロウの多様な物理的特性を生み出し、それが高い抗菌性、優れた防水性、そして長期にわたる安定性を持つ理由です。
ミツロウの歴史・エピソード
ミツロウの歴史は非常に古く、何千年も前から人々はミツロウを様々な形で利用してきました。例えば、古代エジプトではミイラを保存するための防腐材として、ローマでは書き物をするタブレットのコーティング材として使用されていたと言われています。中世ヨーロッパでは、ミツロウはキャンドルの主要な原料となり、闇を照らす貴重な光源であると同時に、教会の儀式で神聖な役割を果たしていました。
19世紀には、ミツロウは食品の保存材としても用いられるようになり、特にチーズのコーティングに使われてカビや酸化を防ぐ役割を果たしました。今日では、ミツロウはその持続可能な性質と生物分解性により、環境に配慮した製品の選択肢として再評価されています。ミツロウクレヨンやミツロウワックスといった日用品から、オーガニック化粧品まで、幅広い用途で活用されています。
ミツロウはどのように作られるの?
ミツロウの採取は、通常、ハチミツを採る過程で行われます。まず、ミツバチの巣からハチミツを取り出す際、同時に巣の一部も一緒に取れます。この巣の部分がミツロウの原料となります。さらに、取れた巣のかけらをきれいにするために、お湯で溶かして不純物を取り除きます。ミツロウは水より軽いため、水の上に浮いて固まります。それを取り出して、さらに濾過することで純粋なミツロウができあがります。
持続可能性と環境への配慮
ミツロウの生産はミツバチの生態系に依存しており、その持続可能性は環境保護と直結しています。健全なミツバチの群れと生態系は、品質の高いミツロウの供給に不可欠です。このため、環境に配慮した養蜂方法と、ミツバチの健康を守るための取り組みがますます重要になっています。
ミツロウの種類について
ミツバチの巣から採取されたミツロウは、精製の度合いによって「未精製」と「精製」の2タイプに分けられます。それぞれ特徴が異なるため、用途や好みによって、未精製と精製のどちらを選ぶかを決めることが大切です。
未精製ミツロウとは
自然な風合いが魅力
未精製ミツロウは、最小限の処理で不純物を取り除いた、自然のままの状態です。別名ビーズワックス・イエローとも呼ばれ、ミツロウ本来の自然な成分、黄色い色合い、ほのかな香りが保たれています。そのため、自然の恵みを生かした手作りコスメやキャンドルづくりなど、オーガニック製品を好む方におすすめです。
アレルギー体質の方は慎重に
未精製ミツロウには花粉やプロポリスの残留物が含まれている可能性があるため、これらの物質に敏感な方はアレルギー反応を示すことがあります。特にアレルギー体質の方は事前にパッチテストを行うなどして、慎重な使用を心がけましょう。
未精製ミツロウの特徴
<メリット>
- 天然成分が多く残っている(抗菌性や保湿性などの有益な特性を保持)
- 自然な色と香りを持ち、合成化学物質を避けたい方に適する
- 化学的な処理を施していないため、環境に与える影響が少ない
<デメリット>
- ロットによる色や香り、テクスチャーのバラつきが大きい
- アレルゲンを含む可能性があるため、アレルギー体質の人には適していないことがある
- 精製ミツロウに比べて、未精製ミツロウは含まれる自然成分が酸化しやすい傾向にある
未精製ミツロウは肌に栄養を与える天然成分を豊富に含むため、より高いスキンケア効果が期待できます。リップクリームやハンドクリーム作りに特におすすめです♪ほのかな香りがあるため、ナチュラルキャンドル作りにもgood✨
精製ミツロウとは
純度が高く、品質を均一に保ちやすい
精製ミツロウは、ミツバチの巣から採取された天然のロウから、不純物を徹底的に除去し、色や香りを取り除いた状態のものを指します。別名ビーズワックス・ホワイトとも呼ばれ、活性炭フィルターや漂白剤が使用されることがあります。この精製プロセスを経ることで、純度が高く品質が均一なミツロウが得られ、特に化粧品や医薬品、食品業界で均一な外観や成分が要求される製品に利用されます。
香りや色をつけたいときに最適
精製処理によってミツロウの有益な天然成分の一部も除去される可能性がありますが、余計な成分が取り除かれているため、敏感肌の方向けのアイテムを作る際に特に有用です。また、無色無臭の精製ミツロウは他の成分と組み合わせやすく、クリームやキャンドルに色をつけたり、精油などの香りを活かしたいときに適しています。
精製ミツロウの特徴
<メリット>
- 純度が高く、色や香りでのバラつきがない
- アレルゲンとなる可能性のある成分が除去されているため、敏感肌やアレルギー体質の人に適する
- ほぼ無色無臭で、香りや色を加えたいときに影響が少ない
<デメリット>
- 精製過程で一部の有益な天然成分が失われることがある
- 精製プロセスによってコストが高くなることがある
- 精製プロセスに使用される化学薬品が環境に悪影響を及ぼす可能性がある
精製ミツロウは無臭であるため、練香やアロマキャンドルなど、アロマテラピー効果を重視したアイテムづくりに最適です。精油の香りや効能を際立たせることができます♪また、好みの色に調整しやすく、カラーリップやカラフルなキャンドルづくりにもgood✨
高品質のミツロウを選ぶためのヒント
ミツロウはアロマテラピー専門店(例:生活の木)やキャンドル用品専門店で購入できますが、高品質なミツロウを選ぶために以下のポイントを頭に入れておくとよいでしょう。
信頼できる供給元から購入する
ミツロウは天然素材なので、信頼できる生産者や販売者から購入することが大切です。できれば、オーガニックやサステナブルな農法を採用している生産者を選びましょう。また、一言にミツロウといっても、様々なグレードがあります。特に肌に直接触れる手作りコスメ用には、必ず化粧品グレードのミツロウを選ぶようにしましょう。
色と香りを確認する
新鮮で質の良い未精製ミツロウは通常、明るい黄色をしており、軽いハチミツのような香りがします。変色や異臭がある場合は、品質が落ちている可能性があります。違和感がある場合は使用を控えましょう。
質感をチェックする
良質のミツロウは手で押すと柔らかく、粘性があります。硬すぎたり、砕けやすかったりするものは避けましょう。
ミツロウの基本的な使い方と注意事項
高温を避け、湯煎で溶かす
ミツロウは比較的低い温度で溶け始める性質を持ち、約62〜64℃で溶けます(この温度を融点と言います)。過度に高温での加熱は、ミツロウが持つ有益な特性を損なう可能性があるため、注意が必要です。また、直火による加熱は、温度の急激な上昇とともにミツロウが焦げるリスクや火災の危険を伴います。より均一かつ安全に溶かすため、ミツロウは耐熱容器を用いて湯煎で間接的に温めることを推奨します。
ミツロウを湯煎にかける際は、水が入らないように注意してくださいね。そして、常に換気を良くしておくこともお忘れなく^^
やけどに注意
溶けたミツロウは非常に熱くなる可能性があるので、扱う際には火傷に注意してください。
後片付けはスピーディに
使用した容器や用具に溶けたミツロウが残っている場合は、固まる前にティッシュや布で拭き取りましょう。ミツロウが固まると除去が困難になるため、この手順は特に重要です。ミツロウをきれいに拭き取った後は、通常の洗剤を使用して洗い流します。また、溶けたミツロウをシンクに流すのは避けてください。排水口の中で冷えて固まり、詰まりの原因となります。
使用期限と保管のアドバイス
一般的に、ミツロウは非常に長持ちしますが、その保存性はミツロウの保管状態に大きく依存します。直射日光や高温、高湿度を避け、適切な条件下で保管された場合、ミツロウは数年間は品質を保つことができますが、具体的な保存期間は製品の種類や製造過程によって変わることがあります。詳細については購入した製品のメーカーに確認することをおすすめします。
ミツロウに関するよくある質問 〜FAQ〜
ミツロウを電子レンジで溶かしてもよいですか?
電子レンジを使用してミツロウを溶かすことは可能ですが、注意が必要です。電子レンジでの加熱は温度管理が難しく、ミツロウが高温になり過ぎて成分が劣化したり、発火の危険性があるためです。以下のガイドラインに従ってください。
- 低出力で加熱: 電子レンジの出力を最低に設定し、短い時間(30秒間隔など)で加熱を行い、その都度様子を確認します。
- 均等に加熱: ミツロウのかたまりではなく、小片に切って均等に加熱することが大切です。これにより、ミツロウが均一に溶けやすくなります。
- 頻繁にかき混ぜる: 加熱の間隔でミツロウをかき混ぜ、均一に熱が行き渡るようにします。
- 温度を監視: 可能であれば、電子レンジから取り出して温度計でミツロウの温度を測定します。
- 安全対策を講じる: 電子レンジから取り出す際は、火傷しないように厚手のオーブンミットや鍋つかみを使用してください。
電子レンジでの加熱は不均一になりやすいため、可能であれば、より温度管理がしやすい湯煎法を推奨します。
未精製ミツロウは色や香りのほかに、使用感にも違いがありますか?
未精製ミツロウは、精製ミツロウと比べてテクスチャーに違いがあります。未精製ミツロウには、ミツバチの巣に由来する自然な成分が残っているため、次のような特徴が見られることがあります。
- より粗い質感:未精製ミツロウは精製されたものよりも滑らかさに欠けることがあり、特に冷えた状態では硬くなりやすいです。
- 一貫性の変化:未精製ミツロウはバッチによって色や質感が異なる場合があり、製品に一貫性を持たせるのが難しいことがあります。
- 溶けにくい:未精製ミツロウは精製されたものより溶けにくいことがあり、肌に塗布した際の伸びやスムーズさが異なる可能性があります。
これらの特性により、未精製ミツロウは手作りコスメやアロマテラピー製品に独特の質感をもたらすことができますが、より均一な仕上がりや肌なじみを重視する場合は精製ミツロウの方が好まれることが多いです。そのため、用途や望む製品の特性によって、未精製と精製のどちらを選ぶかを決めることが大切です。
ミツロウは赤ちゃんに使用できる?
ミツロウは天然の成分であり、一般的には安全な素材とされていますが、1歳未満の赤ちゃんへの使用には特別な注意が必要です。ミツロウはミツバチの巣の一部であり、未精製のものにはハチミツの微量の残留物が含まれていることがあります。ハチミツは1歳未満の赤ちゃんにとってボツリヌス菌中毒のリスクがあるため、通常は避けるべきです。ミツロウではこの特定のリスクは関係ありませんが、ハチミツの成分によるアレルギー反応の可能性を排除できません。
さらに、赤ちゃんの肌は非常に敏感で、少量のアレルゲンに対しても反応を示す可能性があります。そのため、ミツロウを含む製品を赤ちゃんに使用する場合は、医療専門家に相談し、パッチテストなどで肌への反応を確認してからにすることを推奨します。
ミツロウを使った手作りレシピ
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